若手インディーズコンピ「シン・ゴミ人間動物園」を褒める 後編
こんにちは。
先日、下記の記事を書きました。東京恋慕企画の若手インディーズコンピ「シン・ゴミ人間動物園」に関するものどす。
とりあえず前記事ではアルバム全12曲中前半6曲の所感を書かせていただきましたので、今回は後半の6曲を聴きつつ、褒めていきたいなって感じです。ただ聴くだけでも中々体力を要するアルバムなので、体調整えてきました。
- tr.7 シロッコ「知ってる」
- tr.8 フルヤアツシ「スカンディナヴィアン=コア=チンポアタックス」
- tr.9 ハングオーバー「ゼロ」
- tr.10 匿名希望「SANPATSU」
- tr.11 虹色じゃむ「生きて」
- tr.12 つはる「からっぽな人間のうた」
- おわり
tr.7 シロッコ「知ってる」
シロッコ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! (@scirocco_band) | Twitter
THE・スリーピースロックンロールバンド。ええぞ。
曲名が良いっすね。個人的にこういう動詞だけみたいな曲名、嫌いじゃないです。フル尺1:35という短さも良い。僕は短い曲が好きです。
サウンド的には古くて音の目が粗いロックンロールサウンド。あくまでサウンド面の話ですが、なんなら横浜銀蝿とかあそこらへんの時代のバンドと一緒に聴いても違和感はないかもしれない。グランジっぽい印象も受けますね。グランジなんて単語久しぶりに使ったな。こういのってたまに無性に聴きたくなるけど、中々聴けないんですよね。
どれだけ控えめに言っても流行りのサウンドではありません。高い音域で歌われる透明感たっぷりのボーカルとか、綺麗にサラウンド化されたバッキングとかスライドを多用するリードもない。ロックバンドというよりはロックンロールリバイバルって感じ。イカ天に出てたって言われても僕は割と納得します。
あと、あれです。めっちゃスリーピースしてるところにとても好感が持てる。最近のスリーピースバンドって、音源だとあんまりスリーピースバンドしてくれないんですよね。ポップスは上物を重ねてなんぼみたいな所もあるので仕方ないですけれど、こういうバンドももっと出てきてくれると、個人的には嬉しい。
【シロッコ】ふえるワカメ【2018.5.12新宿NINE SPICES】
上の楽曲は大分ガレージよりですね。
tr.8 フルヤアツシ「スカンディナヴィアン=コア=チンポアタックス」
https://open.spotify.com/track/1ruu4miGZhu5qag3hSNRK8?si=1zOYYMVQRdiQJEef9Bqo2g
令和の社会に産み落とされた12分の地獄。たすけて。
ジャケットと「インディーズコンピ」って文字列を見た瞬間から、こういうのが1曲はあると思ってましたけど、やっぱりありましたね。せっかくのインディーズコンピ、やはりこういうのは入れとかないとね。
ジャンルについてはよく分かりませんが、真面目に「この曲はどんなジャンルに当てはまるのかな~」なんて考えるような音楽ではないことは分かります。あえて振り分けるのならナードコア、もしくChildren'sですね。僕はあまりこういう音楽を聴かないので、とりあえず佐伯誠之助氏を思い出します。
余談ですが大学の(コピーバンドが主な軽音サークル群に敬遠されている)アングラ音楽サークルでは大体こういうのをやっている人が1人はいます。ちなみに大抵留年しています。
サンプリング元はあまりにも無秩序。日本の国民的アニメのOPから始まり、公共社団法人やヨハン・パッヘルベルまで、喧嘩を売る幅が実に幅広い。展開が一切読めません。著作権ガン無視クールジャパン。
あまり音楽を聴かない人にこそ聴いてほしいです。「こういうのでもいいんだ」「音楽ってなんでもいいんだ」と思えるはず。ちんぽ。
tr.9 ハングオーバー「ゼロ」
ハングオーバー(バンド) (@HANGOVER0320) | Twitter
ハングオーバー - ゼロ [Official Live Video]
ストレートなロックバンド。良い意味であか抜けない音と歌詞が心地よいです。
ドラムカウントを聴いた瞬間「ハチロクだ!」ってなりました。このコンピでハチロク楽曲があるのはちょっと予想してなかったな。僕はハチロクがとても好きです。「ハチロクは売れない」とはメジャー音楽業界の定説ですが、関係ない。俺が好きや。
多分初期のアンダーグラフとかGUGとか、あそこらへんの時期の邦ロックバンドが好きな人には刺さるんじゃないかな。僕はとても好きです。サビの入りの音を出し切れてない感じとか、良いですよね。正に若手インディーズバンドって感じです。こういうバンドがもっと売れるような土壌があれば、もっと楽しいシーンになるのですが...
歌詞は基本的に若々しく青い印象を受けるのですが、所々意外なチョイスもあります。「さよならベイベー」とか。比較的声を歪ませるボーカルなので、こういう単語がとても似合いますね。若々しさと往年の(ステレオイメージな)ロックとの融合具合が面白い。
tr.10 匿名希望「SANPATSU」
匿名希望[バンドです東京の] (@tokumei_info) | Twitter
匿名希望「SANPATSU」「白紙、今日もいいてんき」2018.6.30@大塚MEETS
アンニュイな女性ボーカルと展開多めのオルタナだったりグランジ。
聴いてて「はぇ~そう展開するんや~」って部分がいくつか。イントロを聴いた感じ鬱系シンガーソングライト楽曲を予想してたのですが、大外れでしたね。急激なリズムの変化や歪ませたトレモロギターなんかはどちらかというとポストロックやマスロックを彷彿とさせます。
息の成分ちょい多めの低い女性ボーカルが特徴的、ところどころエッジを立てるのも良い。オタクはこういう声の女性を好きになりがちです。こう書くとやくしまるえつこみたいですが、声だけの印象ならどちらかというと泉まくらとかの方が受ける印象は近いです、個人的には。
楽曲中のバイテン部分の展開やインディーズじゃないと中々採用が難しい感じなので、やっぱりこういうの"ならでは"って感じの展開を聴けるとちょっと嬉しくなっちゃいますね。
tr.11 虹色じゃむ「生きて」
虹色じゃむ🌈8月10日渋谷La.mama周年企画 (@nijiiro_jam) | Twitter
本アルバムでは珍しい明るく元気なガールズポップ。
パッと聞いた感じ「公園でメンバーが常に笑ってる感じのMV撮ってそう」って思ったんですけど、バンドじゃなくてアイドルなんですね。昨今の地下アイドルは実に多様性に富んでいて聴きごたえがあります。
実に味のある歌声が良いですね。決して上手くはありませんが、バックの音や曲調、歌詞なんかとバッチリイメージが符合してます。こういう歌でしっかりビブラートかけられたりすると、それはそれでなんだか浮いちゃうんですよね。サビのユニゾンや掛け合いなんかも良い。しっかりボーカルエディットされた楽曲ももちろん良いですが、こういった楽曲をたまに聴くとほっとします。
あと個人的に好きなのはカラッとしたギターのトーンなんですけど、全体的にクオリティの統一感が出ているのが好感をもてます。楽曲におけるバランス感を大切にしている印象を受けますね。トータルバランスの保たれた楽曲はやはり聴いてて心地よいです。
【虹色じゃむ】2019/3/7 池袋RED-ZONE 愛してるメロンパン
""""""地下"""""って感じがしますね。ライブハウスはちょくちょく行きますが、地下アイドルの場には行ったことがないので、経験してみたい。
tr.12 つはる「からっぽな人間のうた」
https://open.spotify.com/track/7mDvV3agfgwiDFzi8Bgtct?si=tOBlCnjgSGSeVArEuDrD5w
内省的な歌詞が刺さる弾き語り楽曲。
携帯のマイクで直録りしたような質感がノスタルジックな女性ボーカル弾き語り楽曲。全編を通して暗い歌詞が粗い声とギターで紡がれます。インディーズはこうでなくっちゃね。ハイもローもいらんねや。
本アルバムのアルバムのフィナーレを飾るのに相応しい楽曲かと思われます。「フィナーレを飾る」なんて仰々しい表現の仕方は似合わないかもしれないけれど。
あえてこういった書き方をしますが、うだつの上がらない売れないバンドマンやアーティストにとっては、ある意味普遍的な感情を歌っているように思います。何も持っていないのに何かを残したいと常に思っているのが、我々のデフォルトですからね。そういった意味で、やはりこの楽曲はこの位置にいるべきだなと。我々にとっての”みんなのうた”です。
おわり
よっしゃ。
僕の所感としてはこんな感じです。ざっくり表現すれば多彩かつ若々しい、音楽という表現手法の懐の深さを思い出させてくれるようなアルバムでございました。正道を外れたものは往々にして特有の魅力を持ち得るものです。みんな色んな音楽やってるのね〜。
普段僕は作るのも聴くのもポップばかりなのですが、良い意味で好き勝手出来るバンドもやりたいな~って。でも組むまでが面倒なんだよな、バンドって。実際バンドとかグループとか呼び方はなんだっていいけれど、どんな形でもそれなりの年齢の人間が普段の生活をしつつなにかしらの表現をするのって中々に体力を使うので、それだけで尊敬です。
ところで最近は能動的にアルバムを通して聴く機会を増やしているのですが、やはり1曲1曲ずつ取り上げて聴くのとはまた違った楽しみがあります。今回は普段中々耳に出来ない、実にインディーズらしいインディーズ音楽ばかりを聴けたのでとても楽しめました。全てのインディーズアーティストが幸せになれる事を祈りつつ、とりあえず僕は仕事します。お疲れさまでした。